デイサービスに「引き算の経営」が必要なのはなぜか?


注記
※本記事は隔月刊誌『通所サービス&マネジメント』2019年7-8月号に掲載の「デイサービスの黒字経営を維持する「引き算」経営のポイント」(執筆者:株式会社スターコンサルティンググループ 代表取締役 糠谷和弘)より引用しています。

収益確保に「引き算の経営」は必須!

2015年度の介護保険制度改正では,介護報酬のマイナス改定がありました。続いて2018年度の改正では,それまで「3時間以上5時間未満」「5時間以上7時間未満」のように2時間ごとの設定だった単価が,1時間ごとに見直されました。実質的にマイナス改定だったと言えます。

この2回の改定により,閉鎖や休止を選択せざるを得なかった事業所が少なからずありました。生き残るためには,利益を確保しなければなりません。利益を確保するためには稼働率を限界まで高め,該当する加算を積極的に算定して売上を伸ばすことはもちろんですが,同時にコストダウンを図らなければなりません。

食材費や消耗品費の適正化はもちろんですが,最も大きなコストは「人件費」です。人件費を適正に保つこと が,収益確保につながります。だからといって,給与水準を下げることはあってはなりません。今の介護現場は人手不足が慢性化しています。既存職員の定着はもちろん,採用を強化する上でも,給与水準の維持・向上は避けて通れないでしょう。

となれば,適正な人員で,残業ゼロで運営できるような環境の整備が必要です。そのためには,生産性を上げると同時に,業務のムダやムラをなくす「引き算の経営」が不可欠なのです。

介護サービスは「足し算」に なりやすい!

しかし,実際にやってみると「引き算の経営」は難しいものです。理由は,“スタッフのお年寄りを思いやる気持ち”です。介護スタッフの役割は,目の前の利用者の笑顔をつくることです。その実現のために“やってあげたいこと”が盛りだくさんです。

“利用者を思う気持ち”は素晴らしいのですが,実はこれが曲者です。例えば,あるデイサービスでは,1日に10人のスタッフが出勤して運営していたとしましょう。そこにスタッフを1人足したら,1人当たりの業務は減るでしょうか。

10人分の仕事を11人でやるわけですから減って当然ですが,実際には減りません。「人が増えたから,レクリエーションを充実させよう」「外出訓練を強化したらどうか」という具合に,あっという間に1人分の業務量が埋まります。

このように,介護サービスは「足し算の経営」になりやすいのです。これらは「過剰サービス」とは言いませんが,いただいている介護報酬,自己負担の対価として,どこからどこまでのケアやサービスを提供すればよいかの線引きがあいまいなため,放っておくと業務量が青天井に増えていきます。

人数,勤務時間には限界がある事業

言うまでもないことですが,デイサービスを運営するには適正な人数があります。また,大抵の場合は1人当たり8時間勤務がベースのはずです。これを8時間10分,20分にしないと成立しないサービスは提供してはなりません。

何かサービスやプログラムを足したら,どこかで減らさないと業務量を適正量に保つことはできないのです。そのためにも,「引き算の経営」をスタッフ全員が意識することが重要です。


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