サーバントリーダーシップとは

注記
※本記事は隔月刊誌『介護人財』2020年5-6月号に掲載の「組織・スタッフが成長するサーバント・リーダーシップ」(執筆者:日本サーバント・リーダーシップ協会 理事長 真田茂人)より引用しています。

「サーバントリーダーシップ」とは、摩訶不思議な言葉です。「リーダーシップ」は、通常、人や組織を率いて、導くリーダーのあり方を指して使われる言葉。一方、「サーバント」は、「使用人、召し使い、家来、従者、しもべ」あるいは「奉仕者…(主義・信条などに)身をささげる人」。

この全くイメージの違う2つの言葉を組み合わせたのは、ロバート・K・グリーンリーフ(1904年~1990年、アメリカ)です。グリーンリーフは、サーバントリーダーシップとは「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学であると言っています。

日本では「サーバントリーダーシップ」は一般的に、「奉仕型リーダーシップ」あるいは「支援型リーダーシップ」と訳されています。

従来のリーダーシップは、リーダーが主役でメンバーは支える人でした。しかし、サーバントリーダーシップは、メンバーが主役で、リーダーはメンバーが活躍できるように支えるのです。

もちろん、リーダーはミッションや大きな方向は示しますが、実務が始まれば、メンバーが活躍できるように環境を整えたり、メンバーを全力で支援したりするのです(図1)。

サーバントリーダーシップがもたらす変化

ここ2~3年で、サーバントリーダーシップに関する関心が急激に高まってきました。なぜでしょう? それは、従来の「あり方」や「やり方」ではうまくいかなくなってきたからです。
組織にもたらす変化
今までの組織は、介護施設であれ病院であれ企業であれ、管理し統制することを旨として運営してきました。日本経済が順調に伸びていた右肩上がりの状況では、それが最も効率的だったからです。

さまざまな需要が高まり、商品やサービスが大量に必要となったため、供給側はそれに対応する必要がありました。工場は大量生産が必要となり、サービス業は、マニュアルをしっかり守って、決めたことをしっかり実行することが必要でした。それが、均質なサービスにつながったのです。

この前提には、経験のある者が正解を知っているという文化がありました。だから、管理職や上司が正解を部下に教え込み、ちゃんとやるように管理する必要があったのです。部下も、管理職や上司は正解を知っていると思っているので、おとなしく従っていました。

反面、部下は指示待ちになり、自分で考えなくなりました。モチベーションも低く、義務感で最低限の仕事しかしない人をつくってしまうという側面もありました。

マネジメントとリーダーシップ
ところで、管理職は2つの影響力を発揮できます。一つがマネジメントで、一つがリーダーシップです(図2)。
メンバーに決めたとおりに実行してもらう定型業務には、マネジメントが有効です。メンバーに状況に応じて自分で考えて対応してもらう非定型業務には、リーダーシップが有効です。

今までの多くの管理職は、マネジメントはしていても、リーダーシップはあまり発揮していなかったと思います。なぜなら、右肩上がりの世の中では、定型業務をしっかり行うことで十分に対応できたからです。

しかし、顧客(や患者や入居者)の生活環境・家庭事情・価値観は多様化しました。当然、ニーズも多様なものとなり、経験がある者にも正解が分からなくなりました。こういう状況では、現場のメンバー一人ひとりが自分の頭で考えて、自律的に行動し、顧客にサービスを提供することが必要です。だから、リーダーシップの必要性が高まっているのです。

しかし、自分が正しいことを前提に「私の言うとおりにやりなさい」という従来型のリーダーシップでは全くうまくいきません。もし、管理職やリーダーが「サーバントリーダーシップ」を身に付けることができれば、一人ひとりのメンバーの自律性を引き出し、組織の集合知を引き出すことができます。

そうすることによって、真に顧客に貢献できる組織になるのです。


コメント