看取りにおける本人の意向・願いに対して ケアマネは何をすべきか?①

注記
※本記事は隔月刊誌『達人ケアマネ 』2019年6-7月号に掲載の「看取りにおける本人の意向・願いに対して ケアマネは何をすべきか?」(執筆者:株式会社ファーマダイワ ライフサポート事業部長兼 居宅介護支援事業所ファーマダイワ介護サービスセンター 主任介護支援専門員/保健師/助産師/看護師 益永佳予子)より引用しています。

ケアマネとして利用者の意向・願いを確認すること

ケアマネジャー(以下,ケアマネ)として, 利用者本人の意向・願いを確認するのは基本 中の基本と言えます。

情報を収集してアセスメントを行い,顕在的・潜在的ニーズを把握し,ケアプランを作成(原案から,本人・家 族へ確認後に担当者会議を経て本プランへ)するといった経過で,利用者本人がどのような生活をしたいのか,または何を望んでいるか,何を大切にしているのかなどの意向・願いがベースになります。

病気や障がいを受け入れられず心を閉ざしていたり,認知症のある利用者では,利用者自身を理解することに時間を要したりすることもありますが、そのようなケースであっても,ケアマネは利用者本人の意向や願いを汲み取らなければなりません。

本人の意向・願いがうまく反映されているケアプランは,ケアチームの各役割が明確化されているので, より実践的なケアを提供できるのではないでしょうか。それは、看取りの時期(ここで言う看取りの時期とは,期間の長短は問わず,家族と周囲の支援者が,死という最期を見据えている時期とし, 本人においては死が近いと認識している場合もあり,そうでない場合もある,としておきます。)においても同様です。

ただ,看取りの時期では,利用者本人の意向・願いが,終焉の意向,最期の願いになります。そして,家族にとっても本人との最期の分かち合いとなることも意識していなければなりません。

しかし現実は,看取りの時期となると医療者のかかわりが多くなるため,ケアマネからは「自身の立ち位置に悩む」「死を間近にした利用者とのコミュニケーションが苦手で何となく足が遠のく」「病状の変化を把握できず訪問のタイミングが分からない」など,利用者本人の意向や願いを汲み取ることが難しいとの声も聞かれます。

生活の課題が意向や願いに直結することも多い

ケアマネとして,どのような事例においても生活を支える視点を持ち,利用者の意向や願いを汲み取ることができれば,看取りの時期に医療者のかかわりが増えたとしても,引き続き医療者へ生活の課題を伝えることで連携は図れます。まずは,課題を考える前に,“生活” を押さえておきたいと思います。

生活とは,「病気や要介護・要支援状態となっても,①本来の自分でいること,②生活の質を維持すること,③社会(人・地域・仕事など)とつながっていること」と考えられます。それらを深く追求すると,尊厳の維持やスピリチュアルな領域に辿り着きます。つま り,“生活とは,その人として生きる” ことです。したがって,①~③を支援することが ケアマネの役割と言えます。

看取りの時期においても,本来のその人・ その人の生活の質・その人の社会的つながりを理解すると,今その人の置かれている状況とのギャップが,生活の課題であることに気づくでしょう。

例えば,次のような状況です。

・もともと明朗な人なのに,自分自身を押し殺して本音が言えない
・お風呂が大好きなのに入浴ができず不快
・朝の犬の散歩が日課だったのに歩けなくなった
・入院して家族に会えない
・仕事ができない など

めぐみ在宅クリニックの小澤竹俊医師は,「苦しみとは現実の希望との開きである」1)と述べています。本来の自分・生活の質・社会とのつながりを希望とするならば,現実の自分でない状態・生活の質の低下・社会との断絶のギャップが生活の課題であると同時にその人の苦しみであると理解することができます。

では,看取りの時期の医療は生活の中にどのようにかかわっているのでしょうか。在宅医療の目的も,同様にその人の生活を支えることです。すなわち,本来のその人であるために,その人の生活の質を低下させないために,その人の社会的つながりを維持するために,苦痛症状をコントロールすることです。

看取りの時期など医療依存度の高いケースでは,医療者が担う医療マネジメントと前述のようにケアマネが担う生活マネジメントの二重のマネジメントが存在すると思われます (図)。

ケアマネは,生活の課題を医療者へ伝え,共に課題解決を呼びかける役割があるのです。現状の課題からのニーズ,利用者の “入浴したい” “○○へ行きたい” という意向・希望・願いが病状的に実現が可能か否か医療者へ確認し,可能であれば迅速に支援実践をするということです。

このように,看取りの時期では,利用者本人の生活課題からのニーズ(~をしたい,~ に会いたい,~に行きたい)が,終焉の意向 や最期の願いに直結しており,ケアマネとしてのなすべき支援が見えてきます。
(続く)

引用・参考文献
1)小澤竹俊:死を前にした人にあなたは何ができます か?,P.37,医学書院,2017.



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