実地指導に入られやすい事業所とは?

注記
※本記事は隔月刊誌『通所サービス&マネジメント 』2019年5-6月号に掲載の「今さら聞けないコンプライアンス!【最新】転ばぬ先の実地指導対策のキモ」(執筆者:株式会社ヘルプズ・アンド・カンパニー  代表取締役 西村栄一)より引用しています。

増え続ける「指定取消」「停止処分」

厚生労働省の資料(図)によると,不正などによる「指定取消」や「停止処分」を受けた介護施設・事業所は,2000(平成12)年度以降の累計が2,445事業所となり,また,2017(平成29)年度の1年間では257件(介護サービスの種類別で見ると,訪問介護が90件と最も多く,通所介護27件,居宅介護支援27件,認知症対応型共同生活介護26件と続く)で,過去最多を更新しました。

突然の立ち入り検査も増加中!

行政が実地指導を実施するにあたって,「こういう事業所に指導に入る」といった指針や判断基準はありません。しかし,内部告発や外部からの苦情などで急な実地指導および監査が行われる以外では,昨今,次のような事業所が実地指導に入られやすいというのが私の印象です。

・居宅介護支援事業所を併設している事業所
・支給限度額いっぱいまでサービスを利用する利用者が多い事業所
・訪問介護,福祉用具,通所介護などのサービスが同一敷地内に集中していて, 利用者の囲い込みをしている可能性が高い事業所
・サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームに併設している事業所
・急激な事業の拡大や縮小(報酬請求額の急変)があった事業所

2018年3月6日に開かれた「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」の資料には,次のような今後とりわけ強化する指導項目や実地指導の新しい方向性について改めて示されています。

①高齢者虐待等への指導強化
②事務・権限の移譲
③事業者数増,高齢世代の需要の変化,介護サービス事業者の組み合わせの多様化
④指導監督業務の標準化に向けた取り組み(ローカルルールの排除)
⑤居宅介護支援事業所の不正幇助や不適正管理
⑥介護職員処遇改善加算
⑦時期を逸せず適切かつ厳正な指導
⑧施設職員のストレスマネジメント及びメンタルヘルスケアの実施

特に昨今,①の高齢者虐待を背景とした⑦の時期を逸せずとした突然の立ち入り検査が増えています。これは,厚生労働省が2016年3月30日に発出した介護保険最新情報vol.532で示された,通知書なしに実地指導および監査への立ち入りを認めるという改定によるものです。

突然の立ち入り検査を行う最大の理由は「身体拘束・虐待」に対する外部または内部告発です。なお,間接的な原因として,介護職員による医療行為の疑いが「薬等の過剰摂取の疑い」ととらえられることもあります。

突然の立ち入り検査を受けた事業所の管理者の証言によると,ある日,突然10人の指導員が事業所の玄関口に現れ,その一人が「通知書」を持っており,外には救急車が待機していました。立ち入り検査後,指導員は個々に利用者の様子を伺い,救急車に乗ることを促し,拒否者以外の利用者全員を病院搬送したそうです。結果,内部告発の内容が過剰であり,実際はそうでもないことが分かったそうですが,ほかの不具合が発覚し,いくらかの返還はあったものの,指定取消には至らなかったそうです。

身体拘束の意識の強弱については事業所の評価を大きく左右することになるので,事業所の取り組みを明確に説明できるようにしておくことが肝要です。今はまだ居宅サービスにおいては施行されていませんが,介護保険施設をはじめとする特定施設,認知症対応型共同生活介護では身体拘束廃止未実施減算が2018年度より適用されていますので,他山の石 として,当事者意識で将来的な適用を想定して早めに取り組むことをお勧めします。


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