認知症高齢者のための園芸活動とは?

注記
※本記事は隔月刊誌『臨床老年看護』2020年9-10月号に掲載の「中等度認知症高齢者への園芸活動の支援」(執筆者:東京都立大学健康福祉学部 看護学科高齢者看護学 准教授 増谷順子)より引用しています。

園芸活動とは,人が生きている植物の生長過程に主体的にかかわる,例えば種まき,水やり,施肥などの動作体験をすることによって植物が生長変化し,そのことにより人は感覚体験を得るというように,人と植物とが相互作用していることを言います。

このような関係はペットや動物との間でも成立しますが,植物の特徴は沈黙して動けないことです。つまり,植物ではとりわけ人間がその変化や反応に気づき,世話する必要があることから,相互作用はより強くなると言えます。

その相互作用によって,認知症の人には植物の生長変化による喜びなどの感情表出が促され,開花時期や収穫期によって見当識が強化されるなどの短期的効果があり,心身が安定していて自発的に思いや意思を表出できる状態を示すwell-beingをもたらす可能性があります。

認知症は徐々に進行し,無気力,無表情で日々の時間を過ごすようになるなど,慢性的かつ持続的な経過をたどるといった特性があるため,園芸活動の効果が長く持続することは期待できないものととらえるべきです。

つまり,園芸活動は,認知症の症状を持続的に改善させたり,機能の自立を目指すことではなく,むしろ,植物の刺激を媒体として,活動中や活動終了直後,あるいは活動期間における生活の中で,認知症の人に楽しくて充実した時間,落ち着いてゆっくりとした時間,集中して作業に取り組む時間の頻度や機会が増えること,個々の認知症の人の潜在能力が引き出され,wellbeingがもたらされることに意味があると言えます。





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