認知症になられた方々のためのインフォーマルサービスは,地域包括ケアの推進活動の成果もあり,近年,日本中に広がりつつあります。
例えば,「地区自治会によるボランティア活動」「民生委員の活動」「地区社協の家事支援」「サロン活動」「民間企業あるいは有志による買い物支援および移動サービス」「認知症カフェ」などです。
その中で「認知症カフェ」は,人口構造の変化と認知症者の増加に伴う日本の高齢者政策の切り札として創設され,全国に展開されています。認知症カフェ創設の意義とケアマネジメントへの活用方法を次に紹介します。
認知症カフェの歴史
1997年にオランダで始まった「認知症カフェ」は,2009年にはイギリスの国家戦略と位置づけられるなど発展しています。日本においては,1980年に認知症の人の居場所として呆け老人を抱える家族の会(後の認知症の人と家族の会)が開設されました。
2015年1月に,認知症政策推進総合戦略「新オレンジプラン」において7本の柱の4番目「認知症の介護者への支援」の項に「認知症の人やその家族が地域の人や専門家と相互に情報を共有し,お互いを理解し合う場」として認知症カフェなどの設置目標が掲げられ,2018年から全国の市町村に設置されることになりました。
2019年6月には,2025年までの認知症施策の指針である「大綱」においても同様に,具体的な施策として認知症カフェが位置づけられています。
「認知症カフェ」は,創設期に期待された認知症と家族の方々の居場所づくりから,①専門職から認知症に関する正しい情報を得る,②早期発見し医療機関と連携をとる,③その方に合った認知症ケアの手段について情報提供する,④地域包括支援センターや介護保険利用に関する橋渡しを行う,⑤孤立しがちな人や家族が社会参加しやすい場の提供をするなど,多くの役割を担うことが期待されるようになってきています。
認知症カフェの特徴
認知症の症状の自覚はさまざまです。そのため,医療機関を受診することが遅くなったり,介護保険制度を利用できるのか不安になったり,疑問や戸惑いから踏み出すことができず,「自立生活が困難な状況」となってから相談が開始されることが少なくありません。
それを改善するために,認知症カフェは,各地の地域包括支援センターで行ってきた「認知症相談」「早期発見と医療への連携」のための協力機関となることが期待されています。
また,認知症カフェを訪れる人は病型もさまざまで,進行状態も「認知症予防」「MCI」「軽度・中等度・重度認知症」「認知症あるいは精神科疾患のボーダーライン」などさまざまです。
したがって,認知症カフェはそれに対応する力を備える必要があります。現在,質の向上を図るために,各地の認知症カフェは市町村高齢者施策担当と共に研鑽しているので,これから認知症の人への支援に大きな期待が持てると思います。
ここで,各所から質問の多い「認知症カフェ」と,従来から社会福祉協議会が推進してきた地域の居場所である「サロン活動」,介護保険制度による「デイサービス」との違いについて押さえておきたいと思います。
日本における「サロン活動」は地域交流の場であり,近隣の助け合いを育み地域づくりを目指す活動の場でもあります。そこでは,健康な方も,障害のある方も一緒に和み交流することができます。しかし,ここには介護支援は存在しません。したがって,介護保険による支援が必要な人は,介護保険による「デイサービス」を利用することが適切であると考えられます。
一方,「認知症カフェ」は,和んだ雰囲気の中で,認知症に関する正しい情報を得て,早期対応や必要なサービスへの連携をとり社会参加の継続のために利用していただく場です(図2)。
ケアマネジャーの担当するケースの中で,困難なことが生じた場合,専門的な情報を求められた場合などには,ぜひ認知症カフェを活用していただきたいと思います。違った立場の相談者にかかわってもらうことで,対人援助を学ぶことが可能です。
また最近は,男性介護者も増加しています。認知症ケアの根拠,報道された新情報への意見などを求められたり,高度な対応を求められたりすることもあります。その際には専門誌などを紐解き,自己のケアマネジャー力のアップを図っていくことが重要です。
認知症カフェには,前述のような取り組みに加えて,楽しい企画や多世代共同事業などを行っているところも多く見られます。楽な雰囲気で相談に乗れたり,運動不足を解消したりというエッセンスを加えて運営されています。
時々,「デイサービスの代わりに預けたい」という相談があります。「認知症カフェ」の役割について勘違いされている場合もありますが,「認知症カフェ」をマネジメントに生かすための場と考えて,一緒にかかわってください。
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