外国人職員採用の留意点

注記
※本記事は季刊誌『地域包括ケア時代の通所&施設マネジメント』2020年5月配本号に掲載の「介護人財確保のための外国人の採用」(執筆者:医療法人医療法人敬歯会 介護老人保健施設けいあいの郷今宿 介護課長 當間雄二)より引用しています。

外国人職員採用までの流れ

EPA受け入れまでの流れは大まかに,①EPA受け入れの説明会,②現地面接,③マッチング,④訪日前日本語研修,⑤訪日後日本語研修,⑥就労開始となっています。

当グループでは,EPAや技能実習生の受け入れを法人本部が一手に担っています。 実際に現場職員がかかわるのは就労が開始になってからになりますが, 訪日後日本語研修時に日本語研修を行っている場所で会う機会が数回あり,その時点で顔合わせや就労に当たっての金銭面・福利厚生面・必要な 物などを伝えることができます。

また,その際の会話や相対した時の雰囲気などを考慮して,どこに配置するか,誰を担当者とするかなどの判断材料とします。

外国人職員採用についての説明と留意点

 EPAの受け入れについて,現場の職員は何を思うでしょうか。初めてEPAという言葉を聞く人もいれば,そもそも「何をしてもらえばよいか」「どんな指導をすべきか」「日本語を話すことができるのか」「介護の知識や資格があるのか」など,いろいろと思うことがあるでしょう。

私自身,初めて EPAを受け入れる時は疑問や不安を抱きました。そのため,受け入れる側として施設職員への説明と留意点をしっかり伝えることが非常に重要です。

◆ 宗教の理解  
EPAはフィリピン・インドネシア・ベトナムから人材を受け入れており,それぞれの宗教があります。

当施設ではインドネシ アからのEPAを受け入れていますが,イス ラム教・キリスト教・ヒンズー教など信仰している宗教は人それぞれであり,中でもイスラム教の人が多くいます。

イスラム教の女性はジルバブ(ヒジャブ)を着けており,職員だけでなく利用者にとっても見慣れない光景となるため,事前の説明が必要 です。

また,食事面では豚肉やお酒が禁止されていることから,施設で出される食事や歓 送迎会を行う時には十分な注意が必要です。特に禁止されているお酒類には,みりんや料理酒などの調味料も含まれるため,EPAへも説明する必要があります。

さらに,イスラム教は1日5回お祈りをします。仕事中にもお祈りの時間があり,お祈りをする場所と時間の確保が必要です。お祈り場所として浴室・休憩室・会議室などを使ってもらったり,休憩を取る時間を調整したりと,配慮をするとよいです。

◆ 日本語力 
EPAは就労するまでに自国と日本で日本語研修を受けてきます。政府の定めている「求められる言語レベル」は【学習期間1年経過時に日本語能力試験N3合格相当に達している】とされています。

つまり,ゆっくりはっきりと日常的な会話ができ,文字の読み書きも簡単な漢字であれば理解ができるレベルです(表1)。ただし,専門用語についてはまだ理解に乏しいのが現状です。

そのため,仕事の中で私たちが当たり前に使う「トランス」「食介」などの短縮した言葉や,病名や病気の症状など, 専門的な言葉に対しては注意しなくてはい けません。言葉を伝える時には「正しい 言葉」と「言葉の意味」を同時に説明して,日本語と介護・医療の知識の両方が身に付くようにするとよいです。

◆ 仕事内容
EPAは各国で看護師の資格を持っていることが条件になります。そのため,専門的な知識や技術は学んでいますが,卒業後すぐにEPAとして日本に来る人もいるため,介護の技術を一から指導する必要があります。

また,現場経験者だとしても,日本と外国では介護の考え方や方法の違いがあるので,同様に一から指導するスタンスが望 ましいです。

彼らは介護福祉士の資格を取るという目標があり,日本人の職員と同じ知識・技 術・仕事内容を行えるようになる必要があります。日本人の新人を指導する時と同様の指導をし,日本語の理解が難しいことや,介護の技術・知識で分からないことはその都度指導をすることで,一人ひとりが成長できるようにすることが必要です。

◆ 日本の習慣・文化
日本で働き日本人の利用者を相手にする 以上,日本の生活や文化を学び,対応することが必要です。

例えば,何時に出勤しても「おはようございます」と言い,「お先に失礼します」と言って帰ることや,入浴 は湯船につかること,あいさつの仕方,食事のマナーや作法,敬語や丁寧語の使い方など,日本と外国の習慣や文化の違いについても教える必要があります。

特に言葉遣いは要注意で,日本人の使う言葉をそのまままねして覚えることが多いので,乱暴な言葉や不適切な内容はもちろん,職員と利用者の関係性から来る言葉の崩れなどもそ のまま取り入れてしまう傾向にあります。 EPAが正しい言葉を使えるよう,一緒に仕事をする職員の言葉遣いも注意する必要があります。


続きは季刊誌『地域包括ケア時代の通所&施設マネジメント』2020年5月配本号をご覧ください


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