自立の二面性

注記
※本記事は隔月刊誌『達人ケアマネ』2020年4-5月号に掲載の「ケアプラン作成に必要な自立支援の視点」(執筆者:JA長野厚生連 北アルプス医療センターあづみ病院 居宅介護支援事業所 主任介護支援専門員/社会福祉士 中村雅彦)より引用しています。

ケアマネジャーは,仕事の中で実に多くの用語を用い,それをケアマネジャー以外の多くの支援者,利用者などと一緒に使っています。

一見,関係している人が,すべての用語の定義や概念を「共有」して,同じ土俵の上で用語を用いているように見えます。果たして本当にそれができているのでしょうか。

例えば,「自立」という言葉はどのように定義されているのでしょうか。自立の定義について,介護保険の制度設計者は,「人の手を借りずに,日常生活を自分の力で遂行していくこと」としています。

そのため,そこでの自立支援は「自分でできるようになって,介護保険の給付を減らすこと」となります。しかし,実際は,自立ができない利用者が少なくありません。というよりは,そういう方の方が圧倒的に多いでしょう。

そうであれば,「自立」の定義は,「自分の力でできるようになる」というものではなく,「日常生活の中で必要な動作の多くに他者の支援を必要としてはいるが,自分自身の意思で,自分のこれからの生活や人生をどうしていくのかを決定し,自分が満足することができる生活を営むこと」という方が当てはまるでしょう。

前者の自立は「自立」と表現され,「手段的自立」という意味になります。後者の自立は「自律」と表現され,「人格的自立」という意味になります(図1)。
手段的自立を進める代表的な方法が「リハビリテーション」です。人格的自立を進めていく方法は,ケアマネジメントの展開過程そのものです。

このように,ケアマネジャーが「言葉の定義と意味」を正しく理解し,それを土台として,その実現のための方法論を考えていかなければ,支援は誤った方向に進んでしまいます。

例えば,自立支援が難しい利用者に対して,自立支援のためのリハビリテーションを求めたとしても,その効果はどれほどのものがあるでしょう。それよりも,現状の利用者自身が実行できている活動に注目し,その活動が低下しない支援,その活動を日常生活の中で存分に活用する支援が必要となっています。

さらに,言葉の定義や意味を,利用者を含めた関係者全体で「正しく,かつ同じように理解する=共有する」ことが重要になります。そうすることで「チームケア」を形づくることが可能となっていきます。



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