長期ケア施設の特徴

注記
※本記事は隔月刊誌『臨床老年看護』2020年3-4月号に掲載の「長期ケア施設の特徴と看護管理者の役割」(執筆者:千葉大学大学院 看護学研究科 ケア施設看護システム管理学 教授/専門職連携教育研究センターセンター長 酒井郁子)より引用しています。

長期ケアとは,永続的・長期的にケアを必要とする人を対象として,地域の多様な場で提供されます。

特別養護老人ホーム,介護老人保健施設といった高齢者が入居する介護保険でのケアサービス提供の場だけではなく,グループホームやサービス付き高齢者向け住宅,作業所や更生施設,療養型病床なども長期ケアの場です。

慢性疾患の管理のための外来や,在宅で訪問看護サービスを受ける場合も長期ケアとなります。

長期ケアは,急性期ケアと対比して考えると理解しやすいと思います(図1)。
急性期ケア
急性期ケアとは,分かりやすく言えば総合病院での治療に伴うケア提供の場です。その目的は,疾患の治癒と健康状態の回復です。そのために正確な診断と治療が求められ,治療のために「入院」します。

すなわち,急性期ケアは入院および退院というイベントが必ずあり,始まりと終わりが明確です。それは,利用者(患者)が日常から切り離され,非日常の中で治療に依存した生活を送るということです。急性期ケアの使命は,質の高い医療提供になります。

長期ケア
それに対して,長期ケアの目的は利用者のQOLの維持・向上です。始まりもあいまいであることが多く,徐々にケアが必要になってくることが多いかもしれませんが,終わりがいつやってくるのかは不確実です。

ケアが永続的に必要な状態であれば,その生命が終わるまでケアを提供する必要があります。明日亡くなるかもしれないし,10年後まで生きるかもしれない,このような終わりの不確実さがあることが長期ケアの最大の特徴です。

また,長期ケアは日常生活の中にケアが埋め込まれます。ですからケア提供者は,利用者の日常の過ごし方を利用者と共につくることが求められます。ケアや処置の時間を優先させるのではなく,日常の過ごし方の一つとしてアレンジしていきます。

このような長期ケアの最大のミッション(使命)は,尊厳あるケア提供です。このような長期ケアを提供する多様な場がある中で,長期ケア施設とは,長期ケアを提供する「施設」のことを指します。





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