介護保険法において求められるアセスメント

注記
※本記事は隔月刊誌『達人ケアマネ』2020年4-5月号に掲載の「ケアマネジメントの質を高めるアセスメント・モニタリング」(執筆者:社会福祉法人関寿会 はちぶせの里 統括管理者 中野穣)より引用しています。

厚生労働省は,「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(平成11年7月29日老企第22号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)」において,「課題分析標準項目」を示しました(表1)。
介護保険制度上のケアマネジメントにおけるアセスメントでは,最低限この情報については収集しなければならないことになっており,この標準項目が網羅されていれば,どのようなアセスメントツールを使用してもよいとされています。

加えて,「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省介護保険法において求められるアセスメント令第38号)」において,「アセスメントに当たっては,利用者の居宅を訪問し,利用者及びその家族に面接して行わなければならない」とされ,「アセスメントの結果に基づき,(中略)居宅サービス計画の原案を作成しなければならない」と述べられています。

整理すると,利用者の居宅において,標準項目を網羅したアセスメントを実施することが求められていることになります。

アセスメントとは利用者理解

アセスメントが「課題分析」とか「事前評価」と訳されているのを見かけます。課題分析というと,利用者ではなく課題または問題を中心に置くような印象を持ちます。

最近では,アセスメントは「利用者を理解する過程」といった考え方が浸透してきています。支援の中心が「問題解決」から「利用者の存在」へと変化したことの表れではないでしょうか。

アセスメントの2つの枠組みとプロセス

アセスメントで最も大切なのは,利用者に今の自分自身の“思い”を語ってもらうことです。その語りからは,主観的現実(利用者が生きている世界)が垣間見えてきます。

同時に,ケアマネジャーが家を直接訪問して,視覚や聴覚,嗅覚,皮膚感覚で確認したり,多職種からの情報提供や診断書などのデータから確認できたりする客観的現実(他者から見て確認できる世界)があります。

アセスメントは,利用者理解のために,大きくはこの2つの枠組みで情報の整理をします(図1-ステップ1)。そして,得られたこれらの情報をベースに,利用者がどんな人で,どのような状況に置かれているのか,“生きることの全体像”を見立てていきます。 その結果導き出されるのが,利用者が今後何を求めて,どのように生きていきたいのかという「望む暮らし」です。

そして同時に, 24時間の生活の至るところにある,望む暮らしを阻む問題状況と,それを解決するためのニーズや,生活をさらに豊かなものにするためのニーズを導き出していきます。ニーズ には,利用者や多職種から見て明らかに顕在化されたニーズに加えて,利用者や家族が気づいていない潜在化したニーズがあります(図1-ステップ2)。

そして,ニーズが明確になって整理されれば,ニーズの一つひとつに対して利用者の目標を設定し,目標達成のための手立てを考えていきます(図1-ステップ3)。

これがアセスメントの大きな流れです。ニーズを導き出し,目標の設定をして手立てを考えるプロセスは,アセスメントプロセスのステップ2〜3に当たり,同時にケアプラン作成もこのプロセスで行います。


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