介護保険における介護とは何か

注記
※本記事は隔月刊誌『介護人財』2019年11-12月号に掲載の「本当の自立支援ができる人材になる!」(執筆者:一般社団法人日本高齢者改善介護協議会 理事長 有限会社ファイブアローズ 取締役 看護師/社会福祉士/介護支援専門員 岩下由加里)より引用しています。

介護という仕事は、基本的に介護保険を利用していることが多いため、表1の介護保険法第1条が基本となっています。

「法律の文章なんて難しくて分からない」と思っている人もいますが、法律の文章を理解することが実はとても重要で、分からない言葉が出てきたら、辞書を引いてでも理解する努力が必要なのです。なぜなら、介護報酬を受け取っている以上、介護保険法を理解してそのとおりに仕事を進めていくことが要求されるからです。

そして、この第1条は最も重要な条文です。なぜなら、ここに「介護保険における介護とは何か」が書かれているからです。第1条の文章を丁寧に解説していきましょう。

「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり」
この文章は、介護保険を利用することのできる人について説明しています。「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾患等」が原因で、要介護状態になったという点が重要なポイントです。

「入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について」
この文章は、主語である要介護者とはどのような人であるかを説明しています。「入浴、排せつ、食事等の介護」「機能訓練」「看護」「療養上の管理」「その他の医療」、この5種類のサービスを必要としている人が要介護者であるという意味です。

ここではっきりと国が介護職員に求めていることが分かります。まず、3大介護と言われている「入浴、排せつ、食事」が、介護職員のメインの仕事であると言っているのです。

さらに、「機能訓練」はリハビリテーション関連の療法士の仕事でもありますが、介護職員にもできます。「看護」はもちろん看護師、准看護師の役割です。「療養上の管理」は、分かりやすいのが居宅療養管理指導で、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士などの役割です。「その他の医療」は、もちろん各種医療従事者の役割となります。

ですから、国は介護の仕事は「入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練」であると考えているということです。もちろん、「等の介護」と、そのほかのことも含みますが、メイン
はやはりこの3大介護なのです。

ところが、実に面白い話があります。大学院で介護の質を研究している介護仲間は、数多くの介護福祉士や介護を取り巻く医療従事者にインタビューをしています。その中で、「介護福祉士独自の仕事とは何か?」と質問すると、医療従事者の多くはこの「入浴、排せつ、食事」の3大介護をきちんと対応することであると回答したそうですが、介護福祉士本人たちは誰一人として回答しなかったそうです。

多くの介護福祉士は、「要介護者とのかかわりやコミュニケーションが、介護福祉士の独自の役割である」と答えたのでした。

この現象は、国が現場を分かっていないのか、介護福祉士が介護保険という法律を理解していないのか、いったいどちらなのでしょうか。とても興味深い課題ではないかと思っ
ています。

ちなみに私は、「自律支援などの目的を達成しながら、3大介護が安全・安心に実践できて、拘縮などを悪化させない方法を実践できること」が、介護福祉士の基本的な役割だと考えています。これは最低レベルであり、より良い介護福祉士はもっとできることがたくさんあるはずです。

※続きは隔月刊誌『介護人財』2019年11-12月号をご覧ください


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