現場で何となく排泄ケアをしていませんか?

注記
※本記事は隔月刊誌『介護人財』2019年11-12月配本号に掲載の「介護現場における排泄ケアの見直しと底上げにつなげる実践ポイント」(執筆者:DASUケアLAB® 代表 認定排泄ケア専門員(コンチネンスリーダー) 社会福祉士/介護福祉士 大関美里)より引用しています。

排泄ケアは、介護現場で度々話題に上るケアの代表格ではないでしょうか? ただ、ケアとしてかかわる回数や時間が一番多いゆえに、「下剤を何錠服用した」「あの人は何日便が出ていない」などの申し送りで終わってしまっていませんか?

排泄行為は日常生活動作の連続の中にあるものです。私は、チームとして寄り添って考え、排泄が改善されることで、そのほかのケアはもちろん、その人の生活の質が一気に変化するのを現場で見てきました。

「歳のせいだから仕方がない」と諦めるのは最後に取っておきましょう。「その人の“気持ち良い”をサポートするのが排泄ケアだ!」と気付いた介護職は、仕事としてのやりがいを感じたり、利用者の変化にうれしさを感じたりし、喜びにつながっていくことでしょう。

私たちが毎日何げなく繰り返している行為と言われると、何が思い浮かびますか? 例えば、食事や睡眠がありますが、そこには「何を食べるか選ぶ」「何時に寝るか決める」といった“思考”が入ってきます。

ですが、排泄にはそうした思考が入る余地はほとんどありません。「どう出すか」など思考することはなく、生きている限り繰り返される生理的な欲求と言えます。食べることは楽しみの一つとして誰かと一緒に行うことができますが、排泄はそうはいきません。日常的に行っているケアなのに、当事者にならなければ本当に困ったこと、本当のつらさは分かりにくいものです。

「排泄の不都合がその人のQOLの低下や自尊心を失うきっかけになる」ということは知識としては知っているし、想像もできますが、それはあくまで単なる言葉でしかなく、私自身も実際におむつ内排泄を体験するまではどこか他人事でした。にもかかわらず、排泄ケアはその人を支える一番の根っこになります。

排泄委員会などがある施設では、紙おむつやパッドの種類などについて介護職が一緒に考える場面もありそうですが、定期的に検討するチャンスがなければ、開設時に決まったやり方を何となく踏襲している…そんなことはないでしょうか?

排泄ケアは「自分はこうだから」という無意識の偏見から押し付けのケアになりがちです。また、排泄はマンツーマンで行われるケアのため、ケアの善し悪しが他者から評価されることが少ないという環境の問題もあります。

ある施設での調査では「トイレで排尿はできるがおむつ使用」の人は約40%、「予防的におむつ使用」の人は15%にも達していたように(図1)「高齢だからおむつの着用は仕方がない」といった諦めから、本人の意向は聞かれずに“理由なきケア”が行われがちです。
特に高齢者の場合、どうしても排泄の不都合への対処がケア側からの視点となり、失禁の改善やその課題を解決することを目的とした「おむつ交換」や「トイレ誘導」などになりがちですが、本当の目的は「その人の“生きる”を支える」ことです。

「どうしてそのケアをしているのか?」「なぜ、その人はおむつを使用しているのか?」といった根拠は言えますか? そしてその目的はどこにあるでしょうか? 問題や困ったことが起こった時こそ、今までのケアからより良い方へ向かうチャンスです。

続きは隔月刊誌『介護人財』2019年11-12月号をご覧ください。


セミナー

入所者一人ひとりに合った
排泄ケアの最善策12の実践ポイント
・大阪地区:2020年4月19日(日)
・東京地区:2020年5月17日(日)
・名古屋地区:2020年6月21日(日)


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