注記
私や執筆者の一人である森みさ子氏が日総研出版が主催するセミナーでいつも口酸っぱく話している内容を1冊にまとめた,いわゆる「テイクアウト講義集」である。
講義を通して聴講者に伝えていること,ワークショップを通して参加者に自分たちの問題ととらえていただいていることを意識して各章のテーマに採用した。
フレイルやサルコペニアは,老年医学をはじめ非常に幅広い分野で注目されている。これまではどちらかというと,健康寿命の延伸のために地域住民を対象とした学問としてとらえられることが多かった。
しかし,病院をはじめとした医療従事者にとっても,フレイルやサルコペニアは基本的知識として持っておくべきであり,すべての高齢患者に対してスクリーニングや予防,治療を行うべきである。
特に,安易なベッド上安静や絶飲食によって引き起こされる医原性サルコペニアは,医師や看護師だけではなく,あらゆる医療職が予防すべきである。
したがって,フレイルやサルコペニアは病院で診断・治療する時代になったと言えるだろう。
本書には,各論のノウハウはもちろん,医療におけるフレイルやサルコペニアの対策が単なる機能回復や疾患治癒だけではなく,「人々が地域で幸せに暮らすための基本的人権を再獲得し,維持・向上するための医学・医療である」というメッセージが随所に込められている。
どうか本書が,高齢者医療に従事するすべての悩める医療従事者にとってのフレイル・サルコペニアの入門書として,そして医療従事者として一生にわたって医療に向き合い,多職種とのかかわり方をよりよくするきっかけとして,自分自身や患者・家族,さらに地域の人へ良い影響を及ぼすことを願ってやまない。
2019年10月
熊本リハビリテーション病院
リハビリテーション科 医師
吉村芳弘
リハビリテーション科 医師
吉村芳弘
![]() |
序章 長く生きるからより良く生きるへ(吉村芳弘)
●高齢者がマジョリティーとなる時代へ
●平均寿命と健康寿命のギャップ ●長く生きるからより良く生きるへ ●疾患モデルから高齢者モデルへ ●フレイルとサルコペニアは健康長寿の重要ワード
第1章 フレイル(吉村芳弘)
●そもそもフレイルとは
●フレイルの特徴 ●フレイルを評価する ●フレイルの予防・介入
第2章 サルコペニア
●定義と診断(長野文彦)
●4大原因を知っておこう(長野文彦) ●安静時と侵襲時の代謝についてサルコペニアの視点から考える(長野文彦) ●病気があるだけでサルコペニア?悪液質って何だろう(長野文彦) ●サルコペニア予防の最新エビデンス(備瀬隆広) ●サルコペニア治療の最新エビデンス(備瀬隆広) ●どうして病院で医原性サルコペニアが生じるか ~「床上安静」「運動制限」「とりあえず絶食」の弊害(備瀬隆広)
第3章 サルコペニアの摂食嚥下障害(齊藤智子)
●サルコペニアの摂食嚥下障害の概念
●スクリーニングと診断 ●サルコペニアの摂食嚥下障害の治療 ●熊本リハビリテーション病院の摂食嚥下チーム
第4章 医原性栄養障害(工藤 舞)
●成人低栄養の分類
●医原性栄養障害とは ●熊本リハビリテーション病院の栄養スクリーニング ●低栄養の診断(GLIM基準など)
第5章 積極的な栄養サポートの実践(嶋津さゆり)
●MCTとは
●熊リハパワーライス(R)の考案から実践 ●栄養サポートの実践と効果 ●熊本リハビリテーション病院の回復期リハ栄養チームによるアプローチ
第6章 タンパク質摂取のポイント(上野いずみ)
●筋タンパク質の合成
●摂取量と筋タンパク質合成との関係 ●筋量の増加と運動との関連 ●腎機能の低下とタンパク質摂取
第7章 医科歯科連携
●オーラルフレイルとは(辻 友里)
●口腔機能低下症とは(辻 友里) ●口腔スクリーニング(白石 愛) ●病院における歯科の役割と医科歯科連携(白石 愛)
第8章 多職種連携とチーム医療
●病院で多職種連携が必要なわけ(砂原貴子)
●熊本リハビリテーション病院の多職種連携(砂原貴子) ●熊本リハビリテーション病院における認定看護師の役割(小堀加菜恵) ●病診連携:熊本脳卒中地域連携パス,くまモンノート(小堀加菜恵)
第9章 紙上ケースカンファレンス(森みさ子)
●高齢者と低栄養・嚥下障害
●症例概要 ●ベッドサイドでできる栄養・嚥下・サルコペニア評価 ●医原性の低栄養やサルコペニアを防ぐために |
監修・著者/吉村芳弘 熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション科 医師 |
執筆/
熊本リハビリテーション病院 長野文彦 理学療法士 備瀬隆広 理学療法士 工藤 舞 栄養管理部 齊藤智子 リハビリテーション科 医師 嶋津さゆり 栄養管理部 上野いずみ 栄養管理部 辻 友里 歯科口腔外科 白石 愛 歯科衛生士 砂原貴子 看護管理室 小堀加菜恵 看護管理室
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院
森みさこ 周産期センター看護師長 |
A5判 144頁 定価2,600円+税(ISBN 978-4-7760-1896-4) |
リハ栄養と運動でサルコペニアを予防し,患者の予後を改善するための情報がこの1冊に! 安静やとりあえずの絶食は患者の不利益になるかも! 適切なリハ栄養(栄養と運動)によって,患者の回復やQOLにプラスになる実践を学ぶ! 「病院」「施設」で即実践できる! 適切なトレーニングと栄養補給で【長く生きる】から【よりよく生きる】へ NSTの医師・歯科医師・看護師・PT・OT・管理栄養士など、全職種のための実践書。 |
■関連ページ■
コメント
コメントを投稿