通所介護に求められる機能とADL維持等加算

注記
※本記事は季刊誌『地域包括ケア時代の通所&施設マネジメント』2019年11月配本号に掲載の「ADL維持等加算における通所介護計画立案と事例」(執筆者:医療法人 博仁会 志村大宮病院 コミュニティケアサービス部 部長 宮川直彦/ リハビリテーション事業部 生活リハビリテーション科 係長 國井崇洋)より引用しています。

通所介護に求められているのは,2014年8月27日の社会保障審議会介護給付費分科会(第106回)資料にも記載されたとおり,①認知症対応機能,②重度者対応機能,③心身機能訓練~生活行為向上訓練機能,④地域連携拠点機能と示されている。これらの機能ごとに加算が設定されてきていることは明確である。

①認知症対応機能:認知症加算
②重度者対応機能:中重度者ケア体制加算
③心身機能訓練:個別機能訓練加算,ADL維持等加算,生活機能向上連携加算
④地域連携拠点機能:加算ではないが,生活相談員の専従要件の緩和があり,地域への外出が制度上融通が利くようになった

ただし,前提としては,「指定居宅サービス等の事業の人員,設備及び運営に関する基準第92条」において「要介護状態となった場合においても,その利用者が可能な限りその居宅において,その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し,必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより,利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない」と基本方針が示されており,日中の食事・排泄・入浴のケア,それ以外にも家族負担軽減(レスパイト機能)や引きこもり高齢者の支援など,重要な役割がある。

そもそも,医療においてアウトカム指標は,当然のように評価として行われてきた。さらに近年の診療報酬では,人員体制などの評価と診療実績などの評価を組み合わせた「基本部分」と「実績指数」からなる報酬へと変化している。

介護保険制度上でも,これまでに「ストラクチャー」⇒「プロセス」⇒「アウトカム」と一連の流れが導入され,医療に続く形で,アウトカムという実績指数が求められてきた。

通所介護では,個別機能訓練加算を広げるために,ストラクチャーとして人員基準を義務づけることから始まったのは承知のとおりである。それから,2015年度介護報酬改定で「プロセス」を重視する段階に入り,自宅への定期的な訪問で,住環境などの生活に必要なアセスメントを行うことが義務づけられた。そして,2018年度介護報酬改定において,「アウトカム」という,その結果が出ているのかを見る成果報酬となったわけである。

その結果,自立支援の観点から,介護現場で負担が少なく評価がしやすいバーセルインデックス(Barthel Index)というスケールを指標の一つとして,ADL維持等加算が新設された。

ADL維持等加算の単位数は,事業所にとって魅力的ではないように思われる。しかし,政府は「自立支援」に重きを置く宣言をし,介護においても科学的に検証を進めている。これらを考えると,自立支援における成果報酬になっていく方向性は間違いないだろう。それを示すためにも,アウトカムを重視した取り組みは無視できない。それには,次期改定までに体制を整え,準備していくことが重要である。




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