2018年度介護報酬改定で新設・要件変更された加算の算定率と評価

注記
※本記事は季刊誌『地域包括ケア時代の通所&施設マネジメント』2019年11月配本号に掲載の「新設された加算は算定する? しない? 届出だけする?今後,力を入れなければならないサービスとは」(執筆者:株式会社スターコンサルティンググループ 経営コンサルタント 伊谷俊宜)より引用しています。

2018年度介護報酬改定は,終末期ケアと介護予防を促進する意図がはっきりした内容となっています。

今後,介護報酬改定において,基本報酬は極力減算し,加算報酬単価を上げることで,各施設の機能分化を図ろうとする流れは加速すると考えられます。したがって,介護事業経営において,加算算定の重要性は増すばかりの状況です。

◆特別養護老人ホーム(特養)

2015年度介護保険制度改正において,特養の入所対象者は原則要介護3以上に絞られました。特養においては,今後も看取り機能の拡充が求められていくでしょう。

今改定でも,看取り介護加算(Ⅱ)が新設されました。看取り介護加算(Ⅰ)と(Ⅱ)を合算すると,実に65%以上の施設が算定していることとなります。

特養に求められている機能を考えると,今後さらに算定率は上がっていくことが予想されます。この加算を算定できるような入所者を対象としなければ,特養の経営が困難になるのは明白だからです。

褥瘡マネジメント加算が38.2%と比較的高い算定率となっているのに対して,生活機能向上連携加算は非常に低い算定率となっています。看取り機能の拡充と同時に,介護予防の観点から導入された加算ですが,その親和性の低さを露呈する結果となっています。

◆介護老人保健施設(老健)

特養と同様の新加算がいくつかありますが,その算定率は特養よりも高い水準となっています。これは,在宅復帰機能を求められてきた老健のこれまでの取り組みが生きた結果と言えるでしょう。

老健は今後,さらに在宅復帰機能を強化することを求められていくでしょう。在宅復帰のためのアセスメントをより強化していく必要があることを考えると,排せつ支援加算などの算定率はさらに上がっていくことが予想されます。

◆通所介護

機能訓練に対してのアウトカム評価として,ADL維持等加算が新設されましたが,その算定率は目を覆わんばかりの数値となっています。科学的介護を推し進める国の思惑を考えると,非常に危険な状況と言えるでしょう。

生活機能向上連携加算の算定率も,軒並み1桁と低い水準となっています。この加算は,もとよりばらまきの要素が強いことと,大規模法人でないと算定が難しいことから,この算定率は予想どおりの結果と言 えます。

通所介護に関して,サービス提供時間区分が1時間単位となり実質の減算となる中で,その減算分を加算で容易にリカバリで きない建て付けとなっていることがよく分かります。通所介護事業所数を本気で減らしたい国の思惑が透けて見える結果となっています。

◆通所リハビリテーション

通所リハビリテーション事業所は,今後「施設利用卒業者」を出すことが求められています。具体的には,レスパイトを廃し,短いサービス提供時間区分で結果を出すことを求められているのです。

長時間のサービス提供時間区分の報酬単価は軒並み減算されているので,それを補填する意味合いの強いリハビリテーションマネジメント加算や,リハビリテーション提供体制加算の算定率が高いのは当然でしょう。このように,基本報酬の減算を補完する加算が存在するのが,通所介護との大きな違いです。

一方,介護予防の観点で重要な社会参加支援加算と栄養スクリーニング加算は,非常に低い算定率となっています。算定要件が厳しいことを考えると致し方ない部分もありますが,次回改正でもこういった加算が拡充される可能性が高いことを考えると,今のうちから算定の準備を始めるのが賢明でしょう。




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