地域包括ケア時代の特養像と入所マネジメント

注記
※本記事は季刊誌『地域包括ケアを担うケアマネ&相談員』2019年8月配本号に掲載の「重度者重点化時代の特養入所マネジメント!」(執筆者:株式会社ウエルビー 代表取締役 青木正人)より引用しています。

2018年度診療報酬・介護報酬同時改定では,介護保険施設について次の2つの重要な方針が明確になりました。

①介護医療院の創設:介護療養型医療施設の2023年度末廃止が決定され,医療依存度の高い高齢者の生活の場として介護医療院が誕生しました。
②在宅復帰・在宅療養支援施設としての老健:在宅復帰・在宅療養支援機能を有する老健が基本とされ,単なる特養待機者の受け皿では存続が困難になりました。

つまり,特養に求められるのは「在宅生活が困難な中重度の要介護高齢者が,自分らしい生活を看取り期まで継続できるような支援機能」であることが,より鮮明になったと言い換えることができるのです。このポイントを取り違えると,収支うんぬん以前に,施設としての存在 意義さえ失ってしまうことになります。

押さえておかなければならないのは,日常生活継続支援加算を取得して収支状況を改善するには,要介護4・5の新規入所にこだわるだけが唯一の方策ではないということです。「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の新規入所者の割合が65%以上」または「医療的ケア者(吸引,経管栄養)の割合が15%以上」であれば,日常生活継続支援加算の算定要件をクリアすることができます。

要介護2以下でも,認知症が原因で生活の場を求めている人には,認知症自立度がⅢ以上の人が少なくありません。要介護1・2であっても,やむを得ない事情で居宅において日常生活を営むことが困難である場合,つまり「特例入所」には,「認知症である者であって,日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られる」という要件が設けられています。こうした措置が設けられた背景や意義が十分に理解できれば,おのずと施設の入所施策の方向は定まってくるはずです(表2)。
また,言うまでもなく,入所者の入所期間は, 長ければ長いほど特養経営の安定に寄与する大切な要素です。入所時には軽度や中度の状態の入所者であっても,その多くはいずれ重度化する可能性が高いということを考慮すれば,極端な重度者優先の方針が何にも勝るとは言えません。とりわけ,地方では空きベッドが増加し,要介護4・5はもちろん,要介護3以上に限定した利用者募集は非現実的と言えます。

地域資源には偏りがあり,特養が求められる役割も常に一つとは限りません。地域や利用者のニーズを把握し,変化していく社会や市民の意思にかなったマネジメントが何よりも大切だということを忘れてはなりません。


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