認知症高齢者にありがちな食の問題

注記
※本記事は隔月刊誌『介護人財』2019年7-8月号に掲載の「認知症高齢者の口腔ケア―食事ができる口づくり」(執筆者:都立府中療育センター訓練科/言語聴覚士 山本弘子)より引用しています。

認知症患者の数は増加の一途をたどり、2020年には600万人を超えるという予測も出ています。皆さんがお勤めの施設にも、認知症を有する高齢者がきっと多くいらっしゃることでしょう。

ご存じのとおり、認知症と言っても、個々人によって症状も重症度も異なります。そして、介護する側の立場から考えて最も困るのは、「食べてくれない」ことではないでしょ
うか。

アルツハイマー型認知症では、初期にはむしろ過食になることが多く、体重は増加傾向になります。中期、後期と症状が進むと、徐々に精神活動が低下し、発話量が減少し不活発になり、活動量が減少していきます。この頃になると、さまざまな認知機能障害が起こると共に、食事を適正量食べることが少なくなり、体重が減少していきます。

食事に関する具体的な症状としては、食事にかかる時間が長くなる、食べこぼすことが多い、食べものを口に入れたまま動作が止まってしまう、食事の途中で箸を置いて動かなくなってしまう、食事動作そのものが止まってしまうなどが挙げられます。

また、終末期には、食事介助をしようとしても口を開けてくれなくなります。体重が半年で数kgも減ってしまう、血液検査を行ってアルブミンの値が3.5を切るほど低くなってい
るなどの状態にある場合は、できるだけ早いうちに栄養補給の手段を考えなければなりません。

「食べられなくなった時が人として最後の時」と言う人もいますが、家族にとっても介護職にとっても、「食べてもらえない」「栄養が摂れない」ことはとても切なく、心の痛む
問題だと思います。全く食べられなくなってしまう前に、できる工夫と援助を行い、最期まで「ああ、おいしいご飯だった」と言ってもらいたいですね。

どのような徴候があると、口から食べることをあきらめなくてはいけないのでしょうか? 

最も深刻な問題は、誤嚥性肺炎を反復することです。1カ月のうち何度も食事に関連した熱を出してしまう人は、残念ですが口から食べることをあきらめなくてはならないかもしれません。ただ、そこに至るまでには、いくつか観察・検討しなくてはならない側面があります。

まず、口の中を見せてもらいましょう。舌はもちろんのこと、頬と歯茎の間、上顎も丁寧に観察しましょう(図1)。乾燥して痰がこびりついてはいないでしょうか? 歯茎が腫れたり赤くなったりしていないでしょうか? 歯と歯の間に食べかすが残っていないでしょうか? グラグラしている歯はないでしょうか?。

これらの症状があれば、できるだけ早く歯科医師に診てもらい、その人に適正な口腔ケアの方法を聞いて実践しなくてはなりません。


隔月刊誌『介護人財』の詳細およびご購読のお申し込みはこちらから!
 ↓↓
https://www.nissoken.com/jyohoshi/si/index.html


■関連ページ■


コメント