抗認知症薬の種類と 効果・副作用

注記
※本記事は隔月刊誌『臨床老年看護』2019年7-8月号に掲載の「抗認知症薬・向精神薬の種類と効果・副作用」(執筆者:八千代病院 愛知県認知症疾患医療センター 川畑信也)より引用しています。

抗認知症薬の種類

現在,わが国で使用可能な抗認知症薬は4種類ある。いずれも認知症症状の進行抑制効果を期待できるものであり,根治的な薬剤ではないことを忘れないようにしたい。

これらを服薬していても,認知症症状は進行・悪化することがほとんどであり,その進行速度を遅らせる働きを持つに過ぎないのである。そのため,「抗認知症薬は役に立たない」と述べる医師も一部で見られる。

現在の抗認知症薬に過大な期待をすることは好ましいことではない。服薬している患者・家族には,薬物療法以上に重要なことは病気を正しく理解し,上手な介護,適切な対応を心がけることであると指導するようにしたい。

抗認知症薬は,脳内のアセチルコリン濃度を増加させるコリンエステラーゼ阻害薬と,NMDA受容体に拮抗し脳神経細胞を保護するメマンチン(メマリー®)に分けられる。コリンエステラーゼ阻害薬には,ドネペジル(アリセプト®)とガランタミン(レミニール®),リバスチグミン(リバスタッチ®,イクセロン®)の3剤がある。

抗認知症薬選択の基準

抗認知症薬の中でどの薬剤を選択するかの基準を述べることは,なかなか難しいと言える。それは,薬効から見たコリンエステラーゼ阻害薬3剤の使い分けができないからである。

筆者は,コリンエステラーゼ阻害薬3剤は,患者の行動や感情,言動を活発化させる薬剤,メマンチンは,抗てんかん薬や抗精神病薬と一部振る舞いが似る,つまり患者の行動や感情,言動をやや抑える,あるいは安定化させる薬剤と位置づけて使用している(図1)。
つまり,コリンエステラーゼ阻害薬は「元気にさせる」薬剤,メマンチンは「やや穏やかになる」薬剤と言える。

また,服薬介助を行う家族や周囲の状況で,抗認知症薬を使い分けることも考えるべきである。例えば,
●患者と息子夫婦の3人家族で,息子夫婦は朝早く出勤し夕方帰ってくる場合
 ➡1日1回の薬を夕食後あるいは就寝前の服薬としたい(朝食後では服薬管理を十分できない)
●経口薬を多数服薬しているので, これ以上経口薬を増やしたくない時
 ➡貼付薬を選択する
●独居患者で毎日の服薬介助ができない場合
 ➡血中半減期の長い薬剤を選択すると,隔日投与でも効果減弱が少ない
●嚥下障害が出てきた時
 ➡ゼリー剤への変更を考える
など,実際の場面での工夫が大切と言える。


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