フロントエンドとしての介護保険外サービス

注記
※本記事は季刊誌『地域包括ケアを担うケアマネ&相談員』2019年5月配本号に掲載の「地域に開かれた施設を演出!フロントエンドとしての保険外サービスの実践と効果」(執筆者:コミュニティホーム長者の森 取締役 石原孝之)より引用しています。

フロントエンドサービスの構築は急務

「地域で話題の施設ってどこですか?」
そんな質問を投げかけて真っ先に出てくる施設名があるとするならば,その施設は地域でのブランディングがすでにできています。

先行きの不安定な介護保険制度,そして,これだけ介護施設が乱立する中,どこの施設にも負けない地域一番の部分は,施設経営において大事な要素の一つとなっていくことは間違いありません。

一般的に,介護施設は要介護(要支援)状態になってからお客様(利用者)と出会いますが,その前から出会う仕組みが弊社の行っている地域貢献事業=保険外サービスです。マーケティング用語で言えば“フロントエンド”という形になります。

一般的に知られてる例として,居酒屋で言えばランチがフロントエンド商品,夜の飲み会はバックエンド商品です。また,化粧品で言えば無料サンプルがフロントエンド商品,定期購入がバックエンド商品です。

結論から言うと,介護施設も絶対にフロントエンドサービスとして何か行った方がよいと思います。そして,それを必ずバックエンドにつなげていくのです。実践して分かったことですが,弊社のバックエンドは利用者獲得または求人に跳ね返ってきました。

弊社も含め,介護サービスの売り上げの大半が介護保険による収益で成り立っています。しかし5年先,10年先も主軸となる施設経営をしていくのであれば,保険外事業(フロントエンドサービス)の構築は経営者にとっては急務です。しかし,どこから始めたらよいのか全く分からないという経営者が後を絶ちません。もっと言えば,「まだ何とかなるであろう」という考えや,「日々の仕事で手一杯」という経営者が多いのも事実です。

保険外サービスを開始したいといっても,収益の大半のウエイトを占める介護施設経営を安定させなければ,本末転倒になりかねません。

地域コミュニティの創造とその生かし方がカギ

一般的に介護施設を地域に開放しているのは1年に1回,夏祭りか納涼祭などがほとんどです。しかしこれで本当に地域密着と言えるのでしょうか。

介護施設と言えば,暗いニュースばかりが世間に広まっています。また,施設の日常に目を向けると,施設で働くスタッフをはじめ,家族,業者,慰問や地域のボランティア, 運営推進会議の関係者しか施設に出入りしてい ません。外からは全く見えませんし,気軽に施設の中に入れないのが現状ではないでしょうか。

そうした現状を受けて,私は「地域の人たち が日頃からふらっと寄れる場所をつくりたい! 富山型デイサービスのような地域のプラット ホームでありたい」という思いが強くなりました。そんなことを思いはじめている時に,静岡県社会福祉協議会が居場所事業を公募していることを知りました。

居場所事業は,常設型(居場所)の「まちの縁側」や「コミュニティカフェ」などとも呼ばれ,近年全国的に広がっています。東日本大震災では,地域の絆づくりや支え合いの大切さを再認識する契機ともなりましたが,常設型(居場所)の取り組みは,介護予防・認知症予防, 引きこもり・孤独死予防,子育て支援・障がい者支援など,たくさんの社会的な効果が期待さ れています。

弊社がある静岡県内においても, その必要性を感じて活動に取り組んでいる人々が増加し,潜在的なニーズがある地域を含めて,今後の常設型(居場所)を推進する意義は 高まっています。

私は地域コミュニティの創造とその生かし方がカギを握っていると感じ,2014年度に公の 場で,弊社が描く居場所事業の内容として地域にいる元気なシニアのチカラ(社会資源)を活用したビジネスモデルのプレゼンテーションの機会をいただき,協力者を募らせてもらいました。そして,弊社はその地域のチカラを活用した保険外サービスを開始しました。

以前から言われていることですが,特に今後の介護施設経営にとっての最大のリスクは報酬減と人材確保です。ここでお伝えしたい内容は,報酬減を補う保険外サービスではなく,もう一つのリスクである人材確保と利用者獲得を補う仕組みとしての保険外サービスです。

弊社が開設10年目を機に,地域の居場所事業の推進に力を入れて展開している保険外サー ビスは,「カフェコラレ&ネロリカフェ」「森de朝市」「森のこかげ」の3つです。



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